札幌市中央区東本願寺前駅にある、初心者向けスポーツジム フィットメソッドです。
今回は「筋トレ前のウォームアップ 動的 vs. 静的 ストレッチはどちらを取り入れるべきか?」というタイトルで記事を書いていきます。
はじめに
何かハードな運動を行う前には、基本的にウォームアップ = 準備運動の実施が推奨されています。
後の運動におけるパフォーマンスを高めたり、怪我のリスクを下げたりすることができるためです。
トレーニングの準備運動としては、アクティブウォームアップ ⇨ ダイナミックストレッチ ⇨ 特異的ウォームアップ、このような順序での実施が一般的で、各項目を解説したものが以下になります。
・アクティブウォームアップ:身体を温める = 筋温の上昇を目的としており、ウォーキング・ジョギング・エアロバイクがよく採用される。
・ダイナミックストレッチ:柔軟性の向上 = 関節可動域の増加を目的としており、ラジオ体操のように動きがある中で筋肉を伸ばすストレッチのこと。
・特異的ウォームアップ:神経系の活性化 & フォームの確認を目的としており、そのエクササイズ or よく似たエクササイズを低強度の負荷で反復するもの。
このように、トレーニングの準備運動としては、アクティブウォームアップ・ダイナミックストレッチ・特異的ウォームアップの3つが挙げられますが、2つ目の「ダイナミックストレッチ」の部分に関しては、トレーナーの間でも度々話題に上がります。
「ダイナミックストレッチではなく、スタティックストレッチでは後のトレーニングにどのような影響を及ぼすのか?」的な内容です。
柔軟性を向上させる = 関節可動域を増加させる運動に「ストレッチ」がありますが、これは大きく2つに分類することができます。
・ダイナミック (動的) ストレッチ:腕をまわす、足を横に振るなど、ラジオ体操のように動きがある中で筋肉を伸ばすストレッチ。
・スタティック (静的) ストレッチ:ゆっくりジワリと、数十秒間筋肉を伸ばすストレッチ。
※ 一般的に「ストレッチ」と言うと後者を指します。
どちらのストレッチも、関節可動域を増加させる作用があるのですが、トレーニングの準備運動としては、ダイナミック (動的) ストレッチが推奨されることはあっても、スタティック (静的) ストレッチが推奨されることは今現在あまりありません。
その詳細については、以前下の2記事でお伝えしました。
・筋トレ前は静的ストレッチをしない方が良い?逆効果って本当?
・トレーニング前は静的ストレッチではなく動的ストレッチが効果的?
しかし、どうも「締まりがない」と言いますか、上手くまとめられなかった感があるため、改めてこのトピックについてを記事にしていきたいと思います。
ここからが本題です。
関節可動域を増加させる理由
まず、トレーニングの前に関節可動域を増加させる理由ですが、これには「安全性」と「効果」の2つがあります。
例えば (1) では、ベンチプレスと肩の傷害についてを調べており、その結果「肩甲骨をしっかりと寄せる」ことで、肩の傷害を減少させる可能性が示唆されました。
また (2) では、スクワットとしゃがむ深さにおける筋肥大についてを調べており、その結果「深くしゃがむ」ことで、多角的に下肢の筋群を発達させる可能性が示唆されています。
身体が硬い状態 or 柔らかい (身体がほぐれている) 状態では、当然後者の方が肩甲骨をしっかりと寄せることができるでしょうし、深くしゃがむことにも繋がるはずです。
「安全性と効果を高める」という理由から、トレーニングの前には関節可動域を増加させることが重要になります。
動的 vs. 静的
では、どうすれば関節可動域を増加させることができるのかというと、ここで登場するのが、先述したダイナミックストレッチとスティックストレッチです。
再度確認をしておきますが、以下が各ストレッチの概要になります。
・ダイナミック (動的) ストレッチ:腕をまわす、足を横に振るなど、ラジオ体操のように動きがある中で筋肉を伸ばすストレッチ。
・スタティック (静的) ストレッチ:ゆっくりジワリと、数十秒間筋肉を伸ばすストレッチ。
どちらのストレッチにしろ、アプローチの方法が若干異なるだけで、筋肉を伸ばす点は共通しており、関節可動域を増加させる作用があるのですが、実は「筋力の低下」という、ダイナミックストレッチには見られないデメリットがスタティックストレッチには確認されています。
(3) では、足関節 (足首) を対象に、ダイナミックストレッチとスタティックストレッチを行い、関節可動域や筋力にどのような影響が及ぶかについてを調べています。
結果、関節可動域はどちらのストレッチも同様に増加しましたが、ダイナミックストレッチではその後の筋力が徐々に増大したのに対して、スタティックストレッチではその後の筋力が徐々に低下したとのことです。
筋力の低下は「重さを持てなくなる」とイコールなため、その後のトレーニングの質が下がるであろうと推測できます。
実際 (4) では、太もも前の筋肉を対象に「トレーニングだけを行うグループ」と「スタティックストレッチ ⇨ トレーニングを行うグループ」を作り、筋肉量にどのような影響が及ぶかについてを調べているのですが、
トレーニングだけを行うグループ | スタティックストレッチ ⇨ トレーニングを行うグループ |
+ 12.7 ± 7.2% | + 7.4 ± 3.7% |
⇧ のように、前者の方がより増大したみたいです。
このような理由から、トレーニングの準備運動としては、今現在ダイナミックストレッチが推奨されています。
一旦のまとめ
・「安全性と効果を高める」という理由から、トレーニングの前には関節可動域を増加させることが重要になる。
・ダイナミックストレッチとスタティックストレッチ、どちらのストレッチにしろ、アプローチの方法が若干異なるだけで、筋肉を伸ばす点は共通しており、関節可動域を増加させる作用がある。
・「筋力の低下」という、ダイナミックストレッチには見られないデメリットがスタティックストレッチには確認されている。
・筋力の低下は「重さを持てなくなる」とイコールなため、その後のトレーニングの質が下がるであろうと推測できる。
・トレーニングだけを行う場合と、スタティックストレッチ ⇨ トレーニングを行う場合では、筋肉量は前者の方がより増大した (後者は筋肉量の増大を抑制する可能性がある) 。
・よって、トレーニングの準備運動としては、ダイナミックストレッチが推奨されることはあっても、スタティックストレッチが推奨されることは今現在あまりない。
ここまでの話を聞くと、トレーニングの準備運動としては、ダイナミックのみが有益で、スタティックには何1つ利点がないように思えるかもしれませんが、比較的最近実施された研究では、ちょいと興味深いストレッチのデータが得られています。
Effects of Static and Dynamic Stretching Performed Before Resistance Training on Muscle Adaptations in Untrained Men
研究内容をザックリ書き出します。
トレーニング未経験者を「ダイナミックストレッチグループ (DS) 」「スタティックストレッチグループ (SS) 」「ストレッチ無しグループ (CON) 」のいずれかに分け、週2回の頻度で8週間に渡りレッグカールを行った。
研究前後で太もも裏の筋肉量、および筋力がどのように変化するのかを調べた。
DS | SS | CON | |
筋肉量 | + 6.7 ± 4.1 | + 6.0 ± 3.5 | + 5.7 ± 3.0 |
筋力 | + 10.2 ± 13.1 | + 13.9 ± 10.3 | + 12.7 ± 7.6 |
・全てのグループで太もも裏の筋肉量、および筋力は増大した。
・グループ間で有意な差は確認されなかった。
とのことです。
ダイナミックストレッチで最も大きく、スタティックストレッチで最も小さい変化が起こりそうな気もしますが、予想に反した結果になりました。
なぜこのようなデータが得られたのかは定かではありませんが、おそらくスタティックストレッチの「時間」「強度」なんかが関係しているのでしょう。
つい最近公開されたシステマティックレビュー (4) では「スタティックストレッチが “60秒以上” 行われると、筋力にネガティブな影響が及ぶ」との報告がなされています。
さらに「スタティックストレッチが行われたとしても、その後に何か動的な活動を取り入れれば、ネガティブな影響は打ち消される」との報告もなされています (5) 。
そのため「スタティックストレッチは、その後のトレーニングの質を下げる」と一概に断言はできません。
科学的知見に経験論も合わせると「スタティックストレッチによって、確かにその後のトレーニングの質が下がる可能性は十分に考えられるが、伸長時間を1部位あたり30秒程度に留めたり、伸長強度をやや不快感を感じる程度 (中程度) に抑えたり、ダイナミックストレッチや特異的ウォームアップを後ろに追加したりすれば、効果に対するネガティブな影響を心配する必要はほぼない」と言えそうです。
まとめ
・「安全性と効果を高める」という理由から、トレーニングの前には関節可動域を増加させることが重要になる。
・ダイナミックストレッチとスタティックストレッチ、どちらのストレッチにしろ、アプローチの方法が若干異なるだけで、筋肉を伸ばす点は共通しており、関節可動域を増加させる作用がある。
・「筋力の低下」という、ダイナミックストレッチには見られないデメリットがスタティックストレッチには確認されている。
・筋力の低下は「重さを持てなくなる」とイコールなため、その後のトレーニングの質が下がるであろうと推測できる。
・トレーニングだけを行う場合と、スタティックストレッチ ⇨ トレーニングを行う場合では、筋肉量は前者の方がより増大した (後者は筋肉量の増大を抑制する可能性がある) 。
・よって、トレーニングの準備運動としては、ダイナミックストレッチが推奨されることはあっても、スタティックストレッチが推奨されることは今現在あまりない。
・しかし、レッグカールを対象にした、ダイナミックストレッチ・スタティックストレッチ・ストレッチ無しの3グループによる筋肉量、および筋力の変化を調べた研究では、全てのグループで同等の増大が確認された。
・スタティックストレッチが、その後のトレーニングの質を下げるかどうかは、おそらく伸長時間や伸長強度が関係してくる。
・伸長時間を1部位あたり30秒程度に留めたり、伸長強度をやや不快感を感じる程度 (中程度) に抑えたり、またはダイナミックストレッチや特異的ウォームアップを後ろに追加したりすれば、スタティックストレッチがトレーニングの効果に及ぼすと考えられているネガティブな影響を心配する必要はほぼないと思われる。
最後に
今回は「筋トレ前のウォームアップ 動的 vs. 静的 ストレッチはどちらを取り入れるべきか?」というタイトルで記事を書いてきましたがいかがだったでしょうか?
ちなみに、当ジムの指導では、基本的には王道であるダイナミックストレッチをトレーニング前の準備運動として採用しており「状況に応じてスタティックストレッチもメニューに組み込む」といったスタイルを取っています。
久々の長文でした。
次回作もご期待ください。
参考文献
(1) Effects of bench press technique variations on musculoskeletal shoulder loads and potential injury risk
(2) Effects of squat training with different depths on lower limb muscle volumes
(3) Changes in Range of Motion and Muscle Strength of the Ankle Joint after Static and Dynamic Stretching
(4) Revisiting the stretch-induced force deficit: A systematic review with multilevel meta-analysis of acute effects
(5) The effects of different durations of static stretching within a comprehensive warm-up on voluntary and evoked contractile properties
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