札幌市中央区東本願寺前駅にある、初心者向けスポーツジム フィットメソッドです。
つい先日、お客様から「ここで教わっているデッドリフトは、両手の内側に脚が収まっていますが、時々両手の外側に脚を置いた (手幅が狭い & 足幅が広い) デッドリフトを見かけることがあるんですけど、あれは何ですか?」とのご質問をいただきました。
今回は「デッドリフトの種類について コンベンショナルとスモウの違いは?」というタイトルで記事を書いていきます。
デッドリフトの種類について
まず、デッドリフトは「床に置いてあるバーベルを持ち上げる」という全身を使った強度の高いエクササイズになります。
英語だと「Dead Lift」と表記され、この “Dead” には「死んでいる」といった意味があることから「挙上するのが死ぬほど辛い、故にデッドリフト」みたいに説明されたりしますが、これには誤解があり、本来は「完全に静止しているものを挙上する、故にデッドリフト」が正解です。
デッドリフトにはいくつかのバリエーションが存在し、その中でも最も有名な2つが「コンベンショナルデッドリフト」と「スモウデッドリフト」でしょうか。
コンベンショナルデッドリフトは両手の内側に脚が収まるスタイル (左) 、スモウデッドリフトは両手の外側に脚を置くスタイル (右) で、一般的に「デッドリフト」と言うと前者を指す印象です。
※ コンベンショナル (Conventional) には「伝統的な」とか「従来の」といった意味があります。
ちなみに、コンベンショナルデッドリフトは「ナロー (スタンス) デッドリフト」スモウデッドリフトは「ワイド (スタンス) デッドリフト」と呼ばれることもあります。
コンベンショナルとスモウの違いは?
コンベンショナルとスモウの概要を把握できたところで本題に入りますが、基本的に2つのデッドリフトが比較される際は「どちらの方がよりどこに効くのか?」といった効果ではなく「どちらの方がよりウエイト (重さ) を持ち上げることができるのか?」といった挙上重量、およびそれに関連したフォームや身体的特徴に焦点が当てられます。
スクワット・ベンチプレス・デッドリフトの合計挙上重量を競う「パワーリフティング」と呼ばれる競技があるのですが、その界隈の議論に度々登場するのが、このコンベンショナルとスモウです。
デッドリフト
(a) バーはリフターの前に水平に置く。リフターは、バーを両手で握り1回の連続動作で、完全な直立姿勢まで引き上げる。手幅は自由とする。
(b) リフターは、プラットフォームの正面を向かねばならない。
(c) 引き上げが完了したとき膝は良く伸ばされ、肩は後方に返さなければならない。
(d) チ-フレフリーは、リフターの試技が完了したら「ダウン」と言うと共に片手を振り降ろして合図を送る。バーが完全に静止しリフターが試技完了姿勢をとった時に合図が送られる。試技開始の合図はしない。リフターは自分のタイミングで試技を開始する。
(e) 床に置いてあるバーが少しでも浮いたり、引こうと努力しても浮かなかった場合、これを1試技とみなす。従ってこの試技は失敗となる。
上は、日本パワーリフティング協会が発行するルールブックより引用したデッドリフトの流れですが、特に手幅や足幅の規定はありません。
よって、ルールの中であれば、手幅や足幅が狭かろうと広かろうと、たった1kgでもよりウエイトを持ち上げた者が勝利するシビアな世界になります。
では、いったいどのようなスタイルが挙上重量において優秀なのかというと、ここで候補に挙げられるのがコンベンショナルとスモウです。
コンベンショナルとスモウについてを調べた研究はいくつも実施されており、例えば (1) では、バーベルの移動距離を測定しているのですが、コンベンショナルはスモウに比べて長くなることが確認されました。
つまり、コンベンショナルよりもスモウの方が、手幅が狭い & 足幅が広いフォームの関係で、より少ないエネルギーでバーベルを挙上できる可能性があるということです。
他にも (2) では、腕の長さ・脚の長さ・座高等の身体的特徴が、コンベンショナルとスモウの挙上重量にどのような影響を及ぼすのかを分析しているのですが、わずかではあるものの、胴体が短い人ほどコンベンショナルが有利で、胴体が長い人ほどスモウが有利である傾向が示唆されています。
イメージとしては ⇩ こんな感じです (オススメのスタイルを表しています) 。
このように、効果というよりも、挙上重量、およびそれに関連したフォームや身体的特徴に焦点が当てられた比較がなされるのがコンベンショナルとスモウになります。
ここまでお伝えしてきた通り、コンベンショナルとスモウは、パワーリフティング業界で度々議論されるテーマであり、ごく一般的と思われるダイエットやボディメイク・スポーツ競技力向上などを目的としたトレーニングでは、名前の如くコンベンショナルが鉄板であり、スモウがメニューに組み込まれることはほとんどありません。
というのは、コンベンショナルの方がスモウよりも、背中・臀部・大腿後部など、いわゆる後面の筋群 (ポステリオールチェインと言います) の筋力・柔軟性等の向上効果が高いと考えられているためです。
もっとも、コンベンショナルよりもスモウの方が、特に太もも内側 (内転筋群) を鍛える効果は高いかと思います。
しかし、そもそもデッドリフトは「床に置いてあるバーベルを持ち上げるエクササイズ」ですので、物理的にそれ以上深いところまでしゃがむことができません。
それなら、ワイドスタンスのスクワットを取り入れた方が、可動域を目一杯取ることができるため、内転筋群を鍛える効果は高くなるでしょう。
つまり、コンベンショナルはダイエット・ボディメイク・スポーツ競技力等を目的としたトレーニングにも非常に有益なのに対し、スモウは言うなれば「もっと有益な代わりがいるエクササイズ」に落ち着くということになります。
そのため、デッドリフトを行うのであれば、何か特別な理由がない限り、コンベンショナルを選択するに越したことはないでしょう (パワーリフティング目的であればもちろんスモウもOKです) 。
最後に
今回は「デッドリフトの種類について コンベンショナルとスモウの違いは?」というタイトルで記事を書いてきましたがいかがだったでしょうか?
ちなみに、ここでは一切触れていませんが「パワーリフティングにおいて、コンベンショナルとスモウどちらを取り入れるべきか?」を判断するには、各個人の脚の長さや大腿骨の前捻角も考慮する必要があり、大変奥の深いトピックになっています。
機会があれば、ブログに起こすつもりです。
次回作もご期待ください。
参考文献
(1) Kinematic Differences Between the Front and Back Squat and Conventional and Sumo Deadlift
(2) Anthropometrical Determinants of Deadlift Variant Performance
札幌市近郊にお住いの方は、
ぜひ フィットメソッド をご利用ください。