札幌市中央区東本願寺前駅にある、初心者向けスポーツジム フィットメソッドです。
今回は「トレーニング前は静的ストレッチではなく動的ストレッチが効果的?」というタイトルで記事を書いていきます。
はじめに
以前「筋トレ前は静的ストレッチをしない方が良い?逆効果って本当?」というタイトルの記事を書きました。
その中で「筋トレ前のウォームアップとしては、静的ストレッチではなく動的ストレッチがオススメされていて、それについては別のブログで紹介する予定です」とお伝えしており、今日はその件について触れていきたいと思います。
トレーニングの効果と関節可動域について
まず、トレーニングの効果は、関節可動域 (関節を動かす範囲) で変わることが確認されています。
例えば (1) では、過去1年間に渡って、トレーニング経験のない男性を対象にスクワットを実施し、深くしゃがんだ場合と浅くしゃがんだ場合で、筋肉量の増加にどのような影響が及ぶのかを調べています。
深くしゃがむ | 浅くしゃがむ | |
大腿四頭筋 | + 4.9% | + 4.6% |
内転筋群 | + 6.2% | + 2.7% |
大臀筋 | + 6.7% | + 2.2% |
結果、太もも前の大腿四頭筋は同様だったものの、太もも内側の内転筋群・お尻の大臀筋に関しては、深いしゃがみの方が浅いしゃがみよりも有意に増加しました。
こういった研究は他にも実施されているのですが、どうもそれらを見る限り、トレーニングを行う際は「関節可動域を大きく取る」ことでその効果が高まる印象です。
関節可動域を拡大させる方法 静的ストレッチと動的ストレッチ
トレーニングの効果は、関節可動域を大きく取ることで高まる可能性があるため、ウォームアップを行う際は、身体を柔らかくしておくに越したことはないはずです。
では、どうすれば関節可動域を拡大させることができるのかというと、その方法の1つに「静的ストレッチ」があります。
静的ストレッチは、一般的に広く知られているであろう「ごく普通」のストレッチのことで「筋肉をググッと伸ばし、痛気持ちいところで30秒ほどその状態をキープする」というアレです。
静的ストレッチには、身体を柔らかくする効果が確認されているため、ウォームアップに取り入れることで、その後のトレーニングにおける関節可動域を大きく取ることに繋がると考えられます。
しかし、静的ストレッチには、
・実施直後の筋力を低下させる
・筋肥大を弱める
との報告がなされており、ウォームアップに取り入れることで、その後のトレーニングにネガティブな影響を及ぼす恐れがあります。
このような理由から、トレーニング前に静的ストレッチを行うことは、あまりオススメされていません。
一方、同じストレッチでも「ラジオ体操のように、関節を大きく動かしながら筋肉を伸ばす」やり方は「動的ストレッチ」と呼ばれており、トレーニング前のウォームアップ戦略としては、こちらを取り入れることがオススメされています。
では、なぜトレーニング前のウォームアップ戦略として、静的ストレッチではなく動的ストレッチがオススメされているのかというと、それは「関節可動域を同様に拡大させながらも、筋力を低下させない」との報告がなされているためです。
Changes in Range of Motion and Muscle Strength of the Ankle Joint after Static and Dynamic Stretching
研究内容をザックリ書き出します。
成人女性の下腿三頭筋 (足関節) を対象に「静的ストレッチを実施するグループ」と「動的ストレッチを実施するグループ」に分け、ストレッチを行った。
静的ストレッチは足関節の最大背屈角度で2分間静止、動的ストレッチは足関節の最大背屈角度から最大底屈角度までを自発的な運動で20回繰り返した。
各ストレッチの直前と直後・5分後・10分後における、足関節の最大背屈角度と底屈筋力を調べた。
直前 | 直後 | 5分後 | 10分後 | |
静的ストレッチ 最大背屈角度 (°) | 29.3 ± 4.9 | 32.9 ± 5.5 | 33.1± 5.4 | 33.1± 5.7 |
動的ストレッチ 最大背屈角度 (°) | 29.4 ± 4.0 | 31.1 ± 3.9 | 31.6 ± 4.3 | 32.8 ± 4.1 |
静的ストレッチ 底屈筋力 (N) | 666.7 ± 117.8 | 644.7 ± 115.2 | 633.8 ± 97.3 | 636.3 ± 101.4 |
動的ストレッチ 底屈筋力 (N) | 643.1 ± 135.1 | 663.6 ± 123.7 | 659.0 ± 126.4 | 662.4 ± 126.5 |
結果は上の表をご覧いただきたいのですが、まず最大背屈角度は、静的ストレッチ・動的ストレッチともに有意に増加したものの、10分後では両グループに差は見られません。
つまり、どちらのストレッチも「同じくらい足首の可動域が拡大した (柔らかくなった) 」と言い換えることが可能です。
そして、注目すべきは底屈筋力 (足首をググッと伸ばす力) ですが、静的ストレッチでは低下しているのに対し、動的ストレッチでは逆に増加しています。
先述した通り、トレーニングの効果は、関節可動域を大きく取ることで高まる可能性があるわけですが、それだけでは不十分で、やはり重たい重量を扱うことも大切です。
ということを考えるのであれば、トレーニング前のウォームアップ戦略としては、静的ストレッチではなく動的ストレッチの方が良いでしょう。
静的ストレッチでは筋力の低下が確認されましたが、動的ストレッチでは逆に筋力の増加が生じているため、その後のトレーニングでは、重たい重量を扱うことに繋がり、ポジティブな影響を及ぼしてくれるはずです。
最後に
今回は「トレーニング前は静的ストレッチではなく動的ストレッチが効果的?」というタイトルで記事を書いてきましたがいかがだったでしょうか?
このような理由から、トレーニング前のウォームアップ戦略としては、静的ストレッチではなく動的ストレッチがオススメされていますが「静的ストレッチはダメ。動的ストレッチこそが正義」というわけでは全くありません。
例えば、静的ストレッチ ⇨ 動的ストレッチ (またはアクティブな運動) という流れのウォームアップであれば「その後のトレーニングに及ぼすであろうネガティブな影響 (筋力の低下とか) を消失させる」との報告があったりします。
また、先ほど紹介した研究では「静的ストレッチを2分・動的ストレッチを20回」に指定していますが、この分数 (秒数) や回数を変えれば、違った結果になっていたかもしれません。
他にもいろいろあるのですが、文字数が長くなるため、これについては別の機会にでもお伝えする予定です。
次回作もご期待ください。
参考文献
(1) Effects of squat training with different depths on lower limb muscle volumes
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