札幌市中央区東本願寺前駅にある、初心者向けスポーツジム フィットメソッドです。
SNSにはたくさんのトレーニング動画があがっていますが、特にX (旧Twitter) を見ていると、コメント欄でダメ出し?的な内容を目にする時があります。
スポーツジムのマナーやルールを啓蒙するものから、皮肉り小馬鹿にするものまで実に様々ですが、中でも最も多いのが「スクワットの (しゃがむ) 深さ」に対する指摘でしょうか。
「スクワットの深さは人間性の深さ」などと揶揄されることもあり、浅いスクワットの動画に関しては、結構否定的・攻撃的なコメントが目立ちます。
「そんな浅いスクワットじゃ何も意味ないよ」「何このスクワットの浅さはww」的な感じです。
今回は「スクワットでは浅くしゃがむべきか?それとも深くしゃがむべきか?」というタイトルで記事を書いていきます。
目次
結論
最初に結論からお伝えしますと、ボディメイク・健康の増進・スポーツ競技力向上…目的は何であれ、スクワットを行う場合は、
・太ももが床と並行になるくらいまで、深くしゃがむに越したことはない。
・お尻がかかとに付くくらいまで、深くしゃがむ必要はほぼない。
・浅くしゃがむのがダメとは全く思わないが、大抵の場合はメリットよりもデメリットの方が大きい。
・何かしっかりとした理由があるのであれば、浅くしゃがむのも全然アリ。
と考えています。
太ももが床と並行になるくらいまで深くしゃがむに越したことはない
スクワットの深さが、効果にどのような影響を及ぼすのかを調べた研究は、これまでいくつも実施されています。
例えば (1) では、浅いスクワットグループと、深いスクワットグループに被験者を分け、週3回計12週間に渡ってトレーニングを行い、筋肉量・筋力・ジャンプ力などの変化を測定しました。
※ここでは、筋肉量のみに触れていきます。
上は、太もも前の筋肉、大腿四頭筋における部位ごとの増加率を表したもので、白が浅いスクワットグループ、黒が深いスクワットグループになっています。
浅いスクワットグループは2部位のみだったのに対し、深いスクワットグループは全部位で筋肉量の増加が確認されました。
これと似たような報告は他にもなされており、それらを見る限り、浅いスクワットよりも、深いスクワットの方が大腿四頭筋・お尻の大臀筋・内ももの内転筋群などの筋肉をつけるうえで効果的と言えそうです。
具体的には、太ももが床と並行になるくらいまで、深くしゃがむことをオススメしています。
お尻がかかとに付くくらいまで深くしゃがむ必要はほぼない
先ほど「浅いスクワットよりも、深いスクワットの方が脚周りの筋肉をつけるうえで効果的と言えそうです」とお伝えしましたが、一方で、お尻がかかとに付くくらいまで、深くしゃがむ必要はあまり感じません。
いわゆる「膝」は、すねの骨の上に半月板が、そして半月板の上に太ももの骨 (大腿骨) が乗っかった構造をしています。
半月板と接している大腿骨の部分は、均一ではないもののおおよそ球状の形態をしており、膝を伸ばした状態では曲率半径・接触面積が大きくなるため安定性は高くなりますが、反対に膝を曲げた状態では曲率半径・接触面積が小さくなるため安定性は低くなります (と推測できます) 。
つまり、深すぎるスクワットは、膝の不安定性を助長し、傷害のリスクを上げる可能性があるということです。
そのため、例えばウエイトリフティングなどの競技を行っていない限りは、先述した通り、太ももが床と並行になるくらいまでしゃがめば、それで十分ではないかと思います。
浅くしゃがむのがダメとは全く思わないが大抵の場合はメリットよりもデメリットの方が大きい
浅いスクワットを取り入れるメリットとしては、深いスクワットに比べて「高重量を扱うことができる」という点がよく挙げられている印象です。
高重量を扱うことで体幹部に強い刺激が入り、特にスポーツ競技者にとっては安定性の向上に繋がり、それがパフォーマンスにもプラスに働く、という流れでしょうか。
確かに、体幹部を構成する腹直筋・外腹斜筋などの活動は、高重量を扱うことでより大きくなるとの報告があります (2) 。
しかし「浅いスクワットで扱える高重量」は、言い方を変えると「深いスクワットでは不可能な高重量」です。
つまり、脊柱 (腰) に相当な負担をかけます。
当然、傷害のリスクを上げることでしょう。
それなら、浅いスクワットで危険な重量を扱うのではなく、深いスクワットで適切な重量を扱い、もっと効率的、かつ安全に体幹部を鍛えることのできるエクササイズは多々ありますので、それらを別で取り入れた方が良いはずです。
浅くしゃがむのがダメとは全く思いませんが、メリットよりもデメリットの方が大きい気がします。
何かしっかりとした理由があるのであれば浅くしゃがむのも全然アリ
当ジムでは、上記3つの理由から、膝を少し曲げる程度の浅いスクワットではなく、太ももが床と平行になる程度の深いスクワットを推奨していますが、何かしっかりとした理由があるのであれば、あえて浅くしゃがむように指導する時もあります。
例えば「スクワットに恐怖心のある方で、最初のうちは転倒防止用の椅子を後ろに置き、浅くしゃがむところから始める」とか「膝関節を負傷してから間もなく、痛みのない動かせる範囲が限られているため、まずは浅いしゃがみでも良いので、そこからスクワットを再開する」みたいな感じです。
「通過点」と表現すると語弊があるかもしれませんが、あくまでも深いスクワットを理想としながらも、それの代替案として浅いスクワットを取り入れる、という流れでしょうか。
最後に
今回は「スクワットでは浅くしゃがむべきか?それとも深くしゃがむべきか?」というタイトルで記事を書いてきましたがいかがだったでしょうか?
最後に確認となりますが、当ジムでは
・太ももが床と並行になるくらいまで、深くしゃがむに越したことはない。
・お尻がかかとに付くくらいまで、深くしゃがむ必要はほぼない。
・浅くしゃがむのがダメとは全く思わないが、大抵の場合はメリットよりもデメリットの方が大きい。
・何かしっかりとした理由があるのであれば、浅くしゃがむのも全然アリ。
と考えスクワットを指導しています。
次回作もご期待ください。
参考文献
(1) Effect of range of motion in heavy load squatting on muscle and tendon adaptations
(2) Effect of Surface Stability on Core Muscle Activity for Dynamic Resistance Exercises