札幌市中央区東本願寺前駅にある、初心者向けスポーツジム フィットメソッドです。
先日、お客様から「いつもはスクワット ⇨ ベンチプレスの順番なんですけど、この前ベンチプレス ⇨ スクワットに変えてみたら、ベンチプレスは楽に感じて重さを増やすことができ、でもスクワットは重くてメニューをこなせなかったんです。スクワットとベンチプレス、鍛える部位は下半身と上半身で違いますよね? 疲労は溜まっていないはずなのに、こういうのってよくあることなんでしょうか?」とのご質問をいただきました。
今回は「種目の順番でトレーニングの質が変わる? 後半のエクササイズほど力を発揮できない」というタイトルで記事を書いていきます。
結論
最初に結論からお伝えしますが、たとえ鍛える部位が異なろうと、種目の順番でトレーニングの質が変わる可能性は十分に考えられます。
Non-Local Muscle Fatigue 非局所性筋疲労
Bilateral Knee Extensor Fatigue Modulates Force and Responsiveness of the Corticospinal Pathway in the Non-fatigued, Dominant Elbow Flexors
内容をザックリ書き出します (説明をわかりやすくするため、省略している部分も多々あるのですが、おおよその概要は掴めるはずです) 。
この研究では、健康な若年男性を対象に、2つの条件下で腕力 (肘を曲げる力) を測定しました。
1つ目の条件が「レッグエクステンションを5セット」2つ目の条件が「椅子に座って休憩」です。
条件 ① : 腕力の測定 ⇨ レッグエクステンション ⇨ 腕力の測定
条件 ② : 腕力の測定 ⇨ 休憩 ⇨ 腕力の測定
各条件は、最低5日の間隔を空けた別日に実施されているのですが、つまり ① は「脚が疲労した状態で腕力を測定する」 ② は「どこも疲労していない状態で腕力を測定する」と言い換えることができます。
レッグエクステンションは、膝を完全に伸ばせなかったら or メトロノームのテンポよりも動作が遅れたら終了とし、全てのセットを限界まで追い込みました。
下の表は、レッグエクステンションにおけるセットごとの平均反復回数を表したものです。
1セット目 | 23回 |
2セット目 | 16回 |
3セット目 | 14回 |
4セット目 | 13回 |
5セット目 | 10回 |
腕力は、条件の前後で測定されていますが「後」は数秒の休息を挟み12回行っており、その結果がこちらになります (単位はN) 。
レッグエクステンション | 休憩 | |
後1回目の測定 | 352.8 | 366.9 |
後3回目の測定 | 327.6 | 347.2 |
後6回目の測定 | 304.3 | 323.7 |
後9回目の測定 | 288.8 | 309.8 |
後12回目の測定 | 275.2 | 300.6 |
どちらの条件も、測定回数が増えるにしたがって腕力は低下していますが、これは純粋に腕が疲労したためでしょう。
注目したいのは条件間の差で、レッグエクステンション条件は休憩条件と比較し、約10%有意に低いデータが示されました。
「脚が疲労した状態」と「どこも疲労していない状態」では、後者の方がより大きな腕力を発揮できたと言えます。
ある筋群の疲労が、別の筋群の筋力に対して悪影響をもたらす現象は「Non-Local Muscle Fatigue」と呼ばれており、日本語ではおそらく「非局所性筋疲労」とか訳すことができるはずです。
この現象の存在は、先ほど紹介した研究以外にもいくつか報告がなされており、例えば下半身と上半身で異なる筋群や、例えば右と左で同じ筋群でも生じると確認されています。
なぜこのようなことが起こるのかというと、大脳皮質とか脊髄とか、そういった神経系レベルでの活動抑制が主な原因と考察されているみたいです。
簡単に言うと「私たちが身体を動かす時は、脳からの指令がその筋肉に届く。ハードな運動では、その筋肉だけでなく指令部である脳も疲労する。レッグエクステンションではもちろん脚が疲労するが、実は脳にも疲れが溜まっている。腕には一切疲れが溜まっていなくても、脳は疲労しているため最大限の腕力を発揮することができない」とまとめられます。
トレーニングへの応用
Non-Local Muscle Fatigueに関しては、まだ断言できない部分も多々あるのですが、このような現象が確認されていることを考えると、トレーニングの効果に重きを置くのであれば「鍛えたい部位の種目を優先的にメニューに組み込む」が良さそうです。
冒頭で触れたお客様ではありませんが、下半身の筋群をより強化したいのであればスクワットから、上半身の筋群をより強化したいのであればベンチプレスから取り組むことで、トレーニングの効果を高められるでしょう。
実際、種目の順番がトレーニングの効果にどのような影響を及ぼすのかについてはメタ分析がなされており、それによると「最初に行われた種目の方が、後に行われた種目よりも筋力は増加した」とのことです (1) 。
しかし、個人的な見解をお伝えすると「トレーニングの効果」だけで種目の順番を決定するのは、ちょっと危ない気もします。
それについては、以前「どのエクササイズから始めるべきか?トレーニング種目の順番について」で解説していますので、ご興味のある方は是非ご一読ください。
最後に
今回は「種目の順番でトレーニングの質が変わる? 後半のエクササイズほど力を発揮できない」というタイトルで記事を書いてきましたがいかがだったでしょうか?
次回作もご期待ください。
参考文献
(1) What influence does resistance exercise order have on muscular strength gains and muscle hypertrophy? A systematic review and meta-analysis
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