札幌市中央区東本願寺前駅にある、初心者向けスポーツジム フィットメソッドです。
今回は「 “PAP” とは?筋トレのウォームアップセットで活動後増強を応用できるか?」というタイトルで記事を書いていきます。
PAP 活動後増強
まず「PAP」とは、事前に強い筋活動を行うことで、その後の筋力や爆発的パワーが、一時的に増強する現象のことを言います。
PAP:「post-activation potentiation」の頭文字を取ったもので、日本語では「活動後増強」と訳される。
PAPについては、2000年頃から今日に至るまで、数多くの研究がなされてきました。
例えば (1) では、トレーニング経験のある大学生を対象に、カウンター・ムーブメント・ジャンプ (垂直跳びのようなものです) において、スクワットがPAPにどのような影響を及ぼすのかを調べています。
流れとしては、
① 1回目のカウンター・ムーブメント・ジャンプを測定
② 5分間の休憩後、90%1RMの重量で、2レップ・3セットのスクワットを実施
③ 8分間の休憩後、2回目のカウンター・ムーブメント・ジャンプを測定
こんな感じです。
結果、カウンター・ムーブメント・ジャンプの跳躍高は、1回目よりも2回目の方で有意に大きくなりました。
つまり、事前に強い筋活動 (スクワット) を行うことで、その後の筋力や爆発的パワー (カウンター・ムーブメント・ジャンプ) が、一時的に増強した (高く跳べた) ということです。
PAP ウォームアップセットへの応用
少し話はそれますが、トレーニングを行う際は、ウォームアップセットから始めるのが一般的です。
例えば「60kg・8回・3セット」みたいなメニューがあったとすると、おそらく大抵の場合は「まずは20kgで10回、その後は40gで5回」的な感じで、軽い負荷からスタートするかと思いますが、この部分を「ウォームアップセット」と呼びます。
ウォームアップセットは、フォームの確認をしたり、その日の調子をチェックしたり、その後のパフォーマンスを向上させる目的で取り入れられており「メインセットよりも軽い負荷」で終えるのが通常です。
つまり、
① 20kg・10回
② 40kg・5回
❶ 60kg・8回
❷ 60kg・8回
❸ 60kg・8回
このような流れはよく見かけるものの、
① 20kg・10回
② 40kg・5回
③ 80kg・2回
❶ 60kg・8回
❷ 60kg・8回
❸ 60kg・8回
このような流れを見かけることはほぼありません。
※ ○がウォームアップセット ●がメインセット
しかし、後者の流れのように、先ほどのPAPをウォームアップセットに応用すれば、メインセットの質が高まり、トレーニングの効果をも増強できる可能性が考えられます。
そして (2) や (3) では、メインセットの反復回数やトレーニングボリュームにおいて、ベンチプレスやスクワットがPAPにどのような影響を及ぼすのかを調べているのですが、どちらの研究でも、ウォームアップセットに高負荷 (90%1RM)・低回数 (2 〜 3レップ) を取り入れることで (= 事前に強い筋活動を行うことで) メインセットの反復回数やトレーニングボリュームが増大することが確認されました。
メインセットの反復回数やトレーニングボリュームが増大するということは、その分筋肉に対して大きな刺激が入ると言い換えることができますので、きっとトレーニングの効果にも良い影響が及ぶでしょう。
このような理由から、トレーニングを行う際は、PAPをウォームアップセットに応用することがオススメされるときがあります。
しかし、個人的な見解をお伝えすると、PAPをトレーニングのウォームアップセットに応用することは、正直なところあまり実用的ではないかもしれません。
確かに、これまで数多くの報告がなされている通り、事前に強い筋活動を行うことで、その後の筋力や爆発的パワーが、一時的に増強する現象、すなわちPAPは確実に存在することでしょう。
ただ、このPAPについてを勉強する限り、どうも「休憩時間」によって、その恩恵を受けることができるかできないかは変わってくるみたいです (4) 。
PAPの恩恵を受けたいのであれば「事前に強い筋活動」の終了後、4 〜 12分ほどの休憩時間を挟む必要があるとのことです。
先ほど紹介した (2) や (3) では、ウォームアップセットに高負荷・低回数を取り入れることで、メインセットの反復回数やトレーニングボリュームが増大しましたが、ウォームアップセットとメインセットこの間には、10分 & 5分の休憩時間が挟まれています。
よって、
① 20kg・10回
② 40kg・5回
③ 80kg・2回
❶ 60kg・8回
❷ 60kg・8回
❸ 60kg・8回
こんな感じでトレーニングを行うのであれば、PAPを誘発するウォームアップセット ③ と、メインセット ❶ の間に、長い休憩時間を挟まなければいけません。
休憩時間が短いと (1分とかだと) 、③ の疲労が ❶ に悪影響を及ぼしてしまうためです。
ということを踏まえると、PAPをトレーニングのウォームアップセットに応用することは「時間効率」という点から、とてもオススメできるものではありません。
トレーニングの長時間化に繋がりますし、PAP目的でウォームアップセットとメインセットの間に長い休憩時間を挟むくらいであれば、そもそもその間にいくらでも追い込むこともできるわけですから。
最後に
今回は「“PAP” とは?筋トレのウォームアップセットで活動後増強を応用できるか?」というタイトルで記事を書いてきましたがいかがだったでしょうか?
もっとも、PAPの効果は、重量・レップ数・セット数・運動様式、などによっても変わってくるため、やり方によっては、短い休憩時間でもその恩恵を受け、トレーニングのウォームアップセットに応用することができるかもしれません。
しかし、その可能性はおそらく低く、やはり今現段階としては「PAPをトレーニングのウォームアップセットに応用することはオススメできない」のが現状です。
次回作もご期待ください。
参考文献
(1) The effect of isotonic muscle contraction using different squat conditions on post-activation potentiation
(2) Postactivation Potentiation Improves Performance in a Resistance Training Session in Trained Men
(3) Postactivation Potentiation Improves Acute Resistance Exercise Performance and Muscular Force in Trained Men
(4) The effects of rest intervals on jumping performance: a meta-analysis on post-activation potentiation studies