札幌市中央区東本願寺前駅にある、初心者向けスポーツジム フィットメソッドです。
通常、というと語弊があるかもしれませんが、ごく一般的なベンチプレスは、お尻をベンチ台にくっつけた状態で行います。
一方、お尻をベンチ台から浮かした状態で行うベンチプレスは「尻上げベンチプレス」「ケツ上げベンチプレス」などと呼ばれます。
尻上げベンチプレスは賛否両論あり、どちらかと言うと否定的な意見が目立つ印象です。
今回は「尻上げ・ケツ上げベンチプレスは意味ない?ダサい?メリットとデメリット」というタイトルで記事を書いていきます。
個人的な見解
初めに個人的な見解をお伝えしますと、尻上げベンチプレスを「意味ない」とも「ダサい」とも思いません。
結局のところ、どのようなフォームでトレーニングを行うかは個人の自由ですので、尻上げベンチプレスをとやかく否定する気も全くありません。
しかし、パーソナルトレーナーとしての立場からお話しをさせていただくと、シンプルに挙上重量を追い求めているのではなく、例えばボディメイク・健康促進、などを理由にベンチプレスを取り入れているのであれば「筋肉量の増加効果」および「怪我のリスク」の観点より、お尻をベンチ台から浮かせず、くっつけた状態で行われることをオススメします。
筋肉量の増加効果
尻上げベンチプレスには、先ほど動画でも紹介した通り、お尻をベンチ台から浮かした状態で行うため、胸の位置が高く上がり、バーベルの移動距離 (可動域) が短くなり、結果高重量を扱うことができる、というメリットがあります。
高重量を扱うことができれば、特に男性にとってはステータスになるでしょうし、その分強い刺激が入るとされていますので、筋肉量の増加効果も一見大きくなる気もします。
しかし、仮に高重量を扱ったとしても、可動域が狭くなっては、むしろ筋肉量の増加効果は落ちてしまうかもしれません。
可動域と筋肉量の増加効果に関する研究は、これまでいくつか実施されており、例えば (1) ではアームカールを対象に、軽い重さで可動域を広く取るグループと、重い重さで可動域を狭く取るグループを用意し、上腕二頭筋の厚みがどのように変化するのかを調べています。
結果は以下の通りです。
軽い重さで可動域を広く:9.65% 増加
重い重さで可動域を狭く:7.83% 増加
また (2) でもスクワットを対象に、軽い重さで可動域を広く取るグループと、重い重さで可動域を狭く取るグループを用意し、太もも周りの筋肉がどのように変化するのかを調べています。
軽い重さで可動域を広く | 重い重さで可動域を狭く | |
前もも | +4.9% | +4.6% |
内もも | +6.2% | +2.7% |
お尻 | +6.7% | +2.2% |
前ももに関しては同等ですが、内ももとお尻には有意な差が確認されたとのことです。
このような報告は他にもなされており、ということを考えれば、尻上げベンチプレスを行うと、逆に筋肉量の増加効果が落ちてしまうと推測できます。
せっかくきついトレーニングをやり込むのであれば、少しでも効率的であるに越したことはないでしょう。
怪我のリスク
先ほど、たとえ重さが軽くなっても、可動域を広く取る方が筋肉量の増加効果が大きかった、との研究を2つ紹介しましたが、これらはアームカールとスクワットを対象にしているため、ベンチプレスにも絶対当てはまるとは断言できません。
当然、ベンチプレスの場合は反対で、たとえ可動域を狭く取ったとしても、重さを重たくした方が筋肉量の増加効果が高かった、なんてことも考えられます。
実際、知人のパワーリフターの1人からは「尻上げベンチプレスを行うようになってから、高重量をどんどん扱えるようになった」と話を聞いたこともあります。
しかし、ここで懸念されるのが、怪我のリスクです。
「尻上げベンチプレスで扱える重量」は、言い換えると「ごく一般的なベンチプレスでは扱えない重量」になり得ます。
さらに強く言ってしまうと、その人にとって「結構無謀な重量」を扱うことになり得ます。
そのため、これは個人的な経験論からですが、傷害を負う可能性が高くなる印象を受けているのです。
実際「尻上げベンチプレスを行うようになってから、高重量をどんどん扱えるようになった」と話をしていた知人のパワーリフターも、長いこと肩と肘の痛みに悩まされていました。
「筋肉量の増加効果」および「怪我のリスク」の観点から、個人的には尻上げベンチプレスをオススメすることはありません。
ごく一般的なベンチプレスの方が、筋肉量の増加効果も大きくなり、怪我のリスクも減らすことができると考えています。
最後に
今回は「尻上げ・ケツ上げベンチプレスは意味ない?ダサい?メリットとデメリット」というタイトルで記事を書いてきましたがいかがだったでしょうか?
繰り返しになりますが、結局のところ、どのようなフォームでトレーニングを行うかは個人の自由ですので、尻上げベンチプレスをとやかく否定する気は全くありません。
しかし、パーソナルトレーナーとしての立場からお話しをさせていただくと、ベンチプレスを取り入れているのであれば、何か特別な理由がない限り、やはりお尻をベンチ台から浮かせず、くっつけた状態で行われることをオススメします。
次回作もご期待ください。
参考文献
(1) Effect of range of motion on muscle strength and thickness
(2) Effects of squat training with different depths on lower limb muscle volumes